生活について

妖怪ダダンダン

会社付近で使っている自転車の後輪がパンクしてかれこれ1ヶ月以上になる。パンクして間もない頃の仕事終わりに修理に行ったら、コロナの影響か付近の自転車屋がことごとく廃業していて、結局4件まわったけど全滅だった。というわけで修理のしようもなく、前に進むたびに後輪から「ダダンダーン!」と轟音が響く。BMXの選手が前輪だけで前に進むイメージで体重を前輪にかけながら進むとダダンダン轟音が鳴らないと気づいてから、限りなく前傾姿勢で自転車を漕いでいる。

「紙つなげ!」(佐々涼子)を読んだ。震災に見舞われた日本製紙株式会社石巻工場が復活するまでを描いたノンフィクション。日本の出版業界を支えてきたこの石巻工場が震災により、どうしようもない姿になる。震災の描写は、とてもつらいものだった。しかしそこから這い上がり、再生不可と言われた工場を立て直した人々の情熱は凄まじかった。製紙工場(他社ではあるけれども)の見学をさせていただいたことが過去にあったので、それぞれの光景も鮮明に頭の中に描きながら読み進めた。紙を作る機械は全長100mほどで、白い蒸気を立て轟きながら抄紙してゆく姿は圧巻だった。

「紙つなげ!」では主に、16台あるうちの「8号機」という機械を再稼働させるまでが描かれているんだけど、最後の最後に、本文に使用されている紙がまさにこの8号機で抄紙されたものということが書かれていて、ウオッとなった。

普段何気なく手にしている本の紙にもいろいろな種類があって、それぞれ意図があって使い分けられている。例えば漫画の紙は、子どもが買ったときに嬉しくなるように厚みを持たせていて(本を分厚くするため)、なおかつ指を切らないように柔らかくして、かつ本が重くならないように軽くしてある。文庫本に使われている紙も紆余曲折を経て、現在に至る。出版社によって紙のレシピがぜんぜん違うらしく、紙の色も違うらしい。今までそんな目で本を見たことがなかった。

本を選ぶときの楽しみが、またひとつ増えました。
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