生活について

ベストエッセイ

そういえば昨日ネーネーの学童にマジシャンが来る日で、彼女はそれをとても楽しみにしていた。寝るときにどうだった?と聞くと、80歳くらいのおじいちゃんがきたんよ、クルクルパッとしたらなんもないとこから鳥が出てきてんけどな、それほんまもんの鳥やなくて機械の鳥やったわと話していた。いいもんが見れてよかったやんかと言うと、ううんと首を振って「マジックをやるたびにみんなが種明かしをしようとワーワー騒いでいて、それがいやだった」と言っていた。純粋にマジックを楽しもうという人たちのためにマジックというものがありましてな、だからあなたのような人がいてくれたことがきっと、マジシャンにとっては嬉しかったと思う、というようなことを伝えた。

今日は昼から休み。夕方シュシュを保育所に迎えに行った。教室の外で「どうも」と挨拶すると、いつもならワー!と駆け寄ってくる子どもたちが全員シュンとしていて、その中央にシュシュがいた。どゆこと?と思って教室の入り口を見ると先生が立っていて、どうやら全員相当素行が悪かったらしく先生のカミナリが落ちた直後だったらしい。シュシュはわたしが来たのでチャンス!と思ったのか猛ダッシュで教室を飛び出してきた。荷物を全部忘れてて、もう一度教室に戻って荷物を持って一緒に帰った。言葉数も少なく、落ち込んでいる様子だった。「せんせいがあしたからもうきてくれへんって言うとってん。きゅうしょく運んだり、おそうじしたり、ぜんぶ自分たちでやらなあかんねん。どうしよう」と言っていた。先生はきっと明日来てくれるし、わろてはるでと伝えたけど、うん、と小さな返事をしただけ。

ほどなくしてネーネーも帰宅。学童で作ったスライムを落とさないように、慎重に帰ってきた様子だった。

その後仕事帰りの妻とバトンタッチして病院へ爆走。この病院の先生というのが、大学時代の恩師K教授にそっくり。大学時代に尊敬していた教授はK教授とS教授のふたりで、そのふたりともが他の教授たちにライバル心を燃やし、バチバチにやりあっている人だった。皆からは変わり者として見られていたけれど、とても魅力的な教授だった。K教授は経済学の教授なのに、何故か全員授業で個人のホームページを作らされた。ブログサービスが始まるずっと前の時期、ホームページを作っている人なんてほとんどいなかった時代。tripodというサービスでアカウントを取得し、あれこれ調べながら自分のホームページを作った。最初は課題なので仕方がないという感じでやっていたけれど、ホームページを開設した瞬間、世界が外側に向けてブワッと広げられた感覚があって、そこからのめりこんで現在に至っている。K教授のこの授業が無ければ、今のような活動はしていなかったかもしれない。厳しいことでも有名だったK教授の前で卒業論文の発表をしたときに、「よくがんばりましたね」と言われたことがとても嬉しかった。そういうエピソードを、病院に来る度に思い出している。

喫茶店ですこし本を読んで、帰った。

ネーネーが眠りに落ちる前に学童の話をしてくれて、今日は水遊びで全身ずぶ濡れになるまで遊んだんやけどな、先生がひとりひとつずつ水風船をくれてな、わたしと○○ちゃんだけにこっそりふたつくれたんよ言ってストンと寝た。とても良い寝落ちムーブだった。

・「出版ちょっといい話」(メディアパル)
・「ベストエッセイ2022」(日本文藝家協会編)

ベストエッセイは好きな作家のエッセイがたくさん掲載されているので発売即購入。ミロコマチコさんの表紙画がめちゃくちゃ良い。田中卓志の愛にあふれるエッセイに泣き、椹木野衣のどうしようもないくらい切ないエッセイに泣き、村井理子のエッセイで笑い、町田康のエッセイでまた笑った。コロナのことや故人を偲ぶエッセイが多かった。
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