生活について

レモン

子どもの小学校再開。始業式の日の朝にベランダで洗濯物を干していたら、近所から鬼気迫る様子でピアニカの練習をする音が聞こえてきて(朝5時台)、夏休み最終日に宿題をするタイプを超越した、始業式当日に宿題をするタイプ!と思った。ギリギリになったとしても、諦めずにやったのはとてもえらいなあと思う。

「本屋の雑誌」(本の雑誌編集部 編)の「丸善には今もレモンは置かれているか」という記事がとてもおもしろかった。今年の3月に読んだ「檸檬」(梶井基次郎)、表題作である「檸檬」はどういう作品かというと、主人公の男が丸善に行っていくつか取り出した本の上にレモンを置いて「爆弾だあ」と呟いて立ち去るという男の話。この作品にインスパイアされて、丸善にレモンを置いてゆく人が、本当にいるらしい。記事によると、小説の舞台となった丸善の店舗では月に数個のレモンが発見されるそう。

原作通り美術書の上に置いたり、「檸檬」の上に置いたり(文庫版は岩波書店・角川書店・集英社・新潮社から出ていて、何故か新潮社文庫の上に置かれることが多いそう)、置かれる場所は様々らしく、丸善側も黙認しているそうだ。(傷んだレモンを置かれると本が汚損するので困るらしいけど)

「クヌルプ」(ヘルマン・ヘッセ)を読んだ。旅職人として漂泊の日々を続けるクヌルプの日々を描いた、1910年頃に書かれた作品。今までいわゆる「古い作品」というものをなんとなく避けてきたふしがあって、なぜかというといまと時代背景が違いすぎて、文章からその光景を頭の中に思い描くのが難しくて読み進めにくいからだったんだけど、本をよく読むようになっていくらか文字から光景を想像する力がついてきたように思えたので読み始めた。「クヌルプ」めっちゃ良かった。

旅先で出会った女中とのやりとりが激烈に甘酸っぱいし、後半明かされる、エリート学生であったはずのクヌルプがどうして今こういう人生を歩んでいるのかの告白に至っては、分かる…分かるよその気持ち…と同情してしまうし、その後の安らかな死の描写がとても美しい。

でもまあ、物語に没入しているとクヌルプが40歳の自分のことを「老人」と言っていて、老人!と狼狽えてしまった。今と昔では時代背景が違うけれど、わたしもこの時代だともう「老人」の域に入ろうとしているのだな…としみじみ。
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