生活について

ナンのおかわり

勤務先の近くに定期的に店員が入れ替わるインドカレー屋さん(おそらく就労ビザの期限などの理由)がある。そのタイミングの店員によってカレーの辛さが乱高下するので、毎回ロシアンルーレット的な感覚で通っている。前回は救急搬送されそうなほどの辛さで心身ともに痛い思いをして、それから随分長いこと(一年くらい?)行ってなかった。ふとインドカレーが恋しくなり、行った。

今回はとてもいい塩梅で、チキンカレーもほうれん草のカレーもおいしかった。店員さんと目が合う度に「ナンおかわりいるか」と聞かれ、デフォルトの1枚(超巨大)だけでおなかがパンパンになるのでお断りするのだけれど、その度に悲しそうな表情をするので申し訳ない気持ちになる。

ホクホクした気持ちでお会計に行き、ナンおかわりいるか店員さんがちょうどレジの近くにいたので「すいません」と声をかけるとものすごいジャンプをして奥の部屋に消えていった。餓狼伝説のライン移動(※1)の動きそのものだった。

ライン移動をして店員が消え、別の店員がアーハイハイと言いながら出てこられたので、お会計をして店を出た。

おそらくナンおかわりいるか店員さんは、レジのお金を触ることを許されていないのだと思われる。故郷から遠く離れているであろうこの国に来て、お会計を依頼されるたびにライン移動を重ねるナンさんの背中を思い出し、切ない気持ちになった。

次回行くときは、ナンを絶対におかわりして、彼の笑顔を見たいと思う。

(※1)1991年にSNKが発売した格闘ゲーム。2D格闘でありながら「手前」と「奥」の概念が存在し、ライン移動という動きで「手前」と「奥」を移動することができる。ヴォルフガング・クラウザーが使う「カイザーウェーブ」というえげつない技をかわす時に有効。
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